世界の原油価格の指標はWTI
【WTI原油とは】
原油価格の代表的な指標には、米国産の「WTI」のほか、欧州産の「北海ブレント」、中東産の「ドバイ」があり、これら3つが世界の3大原油指標とされている。なかでも米国産WTIは、取引量と市場参加者が圧倒的に多く、市場の流動性や透明性が高いため、世界の原油の指標価格となっている。WTIの価格が欧州産の北海ブレントや中東産ドバイをはじめ、他の原油指標に影響を与えている。なお日本を含むアジア諸国の原油価格は、中東産原油を買い付けているため、ドバイ価格に連動している。WTIとは、ウエスト・テキサス・インターミディエートの略であり、「西テキサス地方の中質原油」という意味である。テキサス州西部とニューメキシコ州南東部で産出される原油は、含有硫黄分が少なく、かつ超軽質という特徴がある。軽質というのは同量であってもガソリンや軽油が多く採れる油種のことであり、需要の中心がガソリンであることから、WTIは良質の原油として知られている。WTIの先物取引は、1983 年5 月に米ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に初めて上場された。WTIは期近(実際に取引されている限月のなかで受渡期日が最も近い限月、ほとんどが翌月渡し)の取引量が最も多く、市況も通常は期近を指す。NYMEX、ICEで取引。
【北海ブレントとは】
原油価格市場において主要な位置を占める原油のひとつ。 主にイギリスの北海にあるブレント油田から採鉱される硫黄分の少ない軽質油である。 ブレント油田の他にノルウェーのオセバーグ油田やイギリスのフォーティーズ油田から採れる原油も含まれるが、こういった原油を混合(ブレンド blend)しているからではなく北海のブレント(Brent)油田から主に採れるためブレント原油といいます。ブレントという名前の由来は岩層区分のBroom, Rannoch, Etieve, Ness and Tarbatから取られた。この石油価格指標に関連してヨーロッパやアフリカ、中東の豊富な精製石油の価格がつけられる傾向があります。ブレント油田は西テキサス原油(WTI:West Texas Intermediate)ほどではありませんが良質な軽質油である。 硫黄分は約0.37%で、スウィート・クルードと呼ばれる分類がなされ、ガソリンや中間蒸留油に適している。一般的には北西ヨーロッパで精製されるが市場価格が輸出に有利な場合には東欧やアメリカのガルフ・コースト、地中海地域で精製されます。ICEで取引。
【ドバイ原油とは】
アラブ首長国連邦のドバイで産出される中質原油であり、アジアの原油価格の指標となっている。
原油は天然資源であるので、その質により価格は異なる。ガソリンや灯油が多く含まれる軽質油で、硫黄分が少ないWTIは高値で取引され、重質で硫黄が多いドバイ原油はWTIより若干安くなる傾向がある。DMEで取引。
【OPECバスケット】
OPEC諸国(アラブ首長国含む)の代表的な原油価格10数カ国を加重平均した値。原油市場を分析する上で重要な指標である。現在下記の原油をベースにしている。原油の性質は、重質油と軽質油が混じっており、北海ブレントとWTIより比重が重い。
※「WTI」「北海ブレット」「ドバイ」「OPECバスケット」など原油価格の指標がある。原油のグレード、輸送コスト、需要と供給で価格差はあるが、基本的にチャートはほぼ同じである。原油価格の指標としてみるならWTIだけ見ていれば問題はない。
世界の原油埋蔵量と生産量
【技術の進歩で埋蔵量が増えていく】
原油価格は地学的な問題(戦争・内戦など)、投機的理由、そして需要と供給の関係などで変動をする。原油高時に技術の進歩が進み採掘可能な原油は増えていった。特に供給面ではアメリカのシェールオイル採掘は原油価格推移を一変させた(シェール革命)。
【原油埋蔵量推移】
原油確認埋蔵量の世界全体値に対するシェアでいうと世界中の抽出可能な原油全体量のうち、17.5%がベネズエラに存在する計算となるが、これも原油高時に採算可能とし採掘が進められたもので2016年の原油安の価格では非常に厳しい状況になっている。
【シェール革命による原油価格競争】
シェールオイル(英語:shale oil)とは、地下深くのシェール層に埋まっている石油の一種のこと。頁岩油(けつがんゆ)、シェール油、ライトタイトオイル(英語:light tight oil)とも言われている。
採掘方法は初めてアメリカとカナダで確立され、同じ層に埋まっているシェールガスと共に、オイルシェールを摂氏350 - 550度にし、乾留して得られる。
技術革新により増産が進んでおり、アメリカではシェールオイルを含む原油の増産が2008年の日量約500万バレルから2014年は800万バレルを超え、2014年5月、国際エネルギー機関(IEA)は「拡大する米国のシェールオイル生産によって今後5年の世界の石油需要増加分をほとんど賄うことができる」との予想を発表した。
シェールオイルのフルサイクルコストは2014年の段階ではシティグループが、1バレル=70〜90ドル前後と試算している。しかし、このコストには、土地の買収など巨額の先行投資も含まれており、シティグループは、土地やインフラがすでに整備されているシェールオイルでは掘削の維持コストは40ドルまで下がりうるとみている。価格競争力を獲得したことでシェールオイルはOPECの優位性を脅かす存在となってきている。これに対しOPECも戦略の転換を余儀なくされ、2014年11月27日にウィーンの本部で行われた総会では大幅な価格下落にもかかわらず、減産を見送り、生産量維持を決定した。OPECの生産量維持にはシェールオイル封じの思惑があるとされ、事実2015年1月4日には米国のシェールオイル関連企業である「WBHエナジー」が原油安が始まって以来初めて破綻した。
・2015年2月10日、国際エネルギー機関(IEA)のマリア・ファン・デル・フーフェン(英語版)事務局長がロンドンでの講演で、「米国産シェールオイルの増産により、OPECの市場シェアが金融危機前の高水準を回復することは困難」との見解を示した。
・2015年12月18日、アメリカはシェールオイル増産により、国内に増産で積み上がった在庫解消するため、1975年以来40年ぶりに原油輸出を解禁した。
【2014年、原油生産量1位は米国】
1.アメリカ・United States
2.サウジアラビア・Saudi(OPEC)
3.ロシア・Russia
4.中国・China
5.カナダ・Canada
6.アラブ首長国‐ドバイ・ Arab(OPEC)
7.イラン・Iran(OPEC)
8.イラク・raq(OPEC)
9.ブラジル・Brazil
10.メキシコ・Mexico
原油基礎知識
【原油の取引単位】
1bbl(バレル)辺りの価格(ドル)で取引される。
【バレルとは】
国際的な原油・石油製品の取引に用いられる単位。原油の価格は1バレルあたりの価格(ドル)で取引されている。またバレルは 「樽」の英名「Barrel」から出たもので、米国の呼名が世界標準になったと言われている。1 バレル=42 米ガロン=159 リットル。
<参考>
原油1リットルあたりの価格は→
・1バレル=原油100ドル
・1ドル=100円
の場合円換算、
100÷159=0.628
0.628×100=62.8円となる。
【日本の原油輸入先】
約84%は中東地域から輸入されている。 輸入先は中東、東南アジア、中央アジア、アフリカ、中南 米、ヨーロッパ、オセアニアなど多岐に亘っていますが、中東地域が全輸入量の約83.6%と高い割合となっています。 原油の輸入先を国別にみると、サウジアラビアが全輸入 量の30.7%と最も高く、次いで、アラブ首長国連邦(UAE) 22.7%、カタール13.0%、クウェート7.2%と続いている。
【原油から精製される製品】
原油からはガソリン、灯油、軽油、重油、ナフサ、LPガスなど複数の製品が同時に一定の割合(得率)で生産されます。得率は技術の進歩や状況で変って行きますが基本的にガソリンが多く精製される。
【為替と株価と原油の関係】
為替と原油は複雑につながっています。基本的に円高で原油安になれば、なるほど日本に安く原油が入る事になります。つまり日本における原油の実質価格は円の変動も関わってきます。
ちなみに一概には言えませんが円は原油が下落した際に安全資産として、リスク回避の円買いとして買われることがあります。逆に原油産油国のロシアのルーブルや株価指数は原油価格に比例しがちです。同じように原油産油国のドバイの株価指数も原油価格のチャートに似た動きになります。
【日本のガソリン価格の4割が税金】
▼ガソリン価格 166.3円(2014年)の場合。
・原油価格(運賃・保険料込み価格) =70.0円
・精製費、管理費、輸送費等=27.7円
・ガソリン税=53.8円
・石油石炭税=2.54円
・消費税(8%)=12.3円
となる。ガソリン価格の約4割以上が税金である。
【現在の米国ガソリン価格(税込)】
アメリカ全土のガソリン価格(ガロン/USドル)。
1ガロンは3.78541リットル。
※税金が1割ほどで、原価も安い米国は日本の価格に比べ4割ほど安い。
・原油基礎知識